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遺言状作成が必要と思われる方へ

「公正証書遺言」をおすすめいたします。


遺言が無かった場合の問題点


相続開始後に第一に直面する問題は何でしょうか。

 それは故人(被相続人)名義の郵便貯金や銀行預金の払い戻しの問題です。

 遺言がないと法定相続なので、複数の相続人がいるのが普通です。

 その相続人全員の同意書か遺産分割協議書がないと預貯金の払い戻しは受けられません。

 これを預金封鎖などといっています。

 相続人が多く、所在不明、生死不明、外国居住などの事情があると、全員の同意を得ることも、遺産分割協議書を作成することも困難で、故人の入院費、葬儀代も支払えないような事態も起こってきます。

 こんなお話をご近所で見たり聞いたりされた方もいらっしゃるかと思います。

 亡くなった御主人名義の預金を払い戻しして欲しいと銀行に行かれたされた高齢の奥様がいて、お尋ねすると子供さんはいらっしゃらないが、主人の兄弟姉妹がいらしゃるとか。

亡くなった御主人の遺品を整理していたら自筆の遺言書が出てきて、自宅の敷地と建物を含む一切の財産を妻の私に相続させると書いてある。

 そこで家庭裁判所に検認の申し立てをした。

 その検認印の押してある遺言書を法務局に持って行ったら不動産(御自宅の敷地と建物)の相続を原因とする所有権移転登記が簡単にできたので、今度は銀行へ行って夫(被相続人であるご主人)の名義の預金を下ろそうとしたところ、相続人全員の同意書か、遺産分割協議書がなければ応じられないと拒否されたそうです。

 亡夫(被相続人)との間には子供がいなかったので、相続人は奥様と亡夫の兄弟姉妹だが、音信不通の人がいたり、既に子供を残して死亡している人もいて、全員の同意書をとることも、遺産分割協議書を作ることも難しい状態にある。

 故人(被相続人)の預金を下ろそうとしたら銀行か応じてくれない。

 遺産の整理・分配でよく起こる難問です。

 亡夫名義の預金の払い戻しを受けるため銀行に行ったが、遺産分割協議書か、他の相続人全員の同意書がなければ応じられないと拒絶された。

 子供はいない。

 この事例では、遺言はないということなので、亡夫の遺産はAさんが4分の3、その亡夫の兄弟姉妹が残り4分の1を均等に相続します。

 預金についても、Aさんが相続したのはその4分の3だから、全額の払い戻しを請求しても拒絶されるのは当然で、銀行の対応はやむを得ないのです。

 銀行としては、もしAさんに全額支払った後、亡夫の兄弟姉妹4分の1の払い戻しを請求された場合、Aさんに全仮払い戻したからという理由では拒絶できません。

 相続問題に巻き込まれてはならないというのが銀行の基本的な立場です。

 預金の適正な管理というのが銀行の基本的な義務ですから、やむを得ないのです。
 それではAさんの相続分4分の3に限っての請求ではどうでしょうか。

 最高裁判所の判断は示されていませんが、自己の相続分の範囲内での払い戻し請求は可能だというのが高等裁判所までの判断が示されています。

 しかし銀行の取扱実務では拒絶されているというのが原則のようです。

 拒絶されたら訴えを起こして払い戻しを請求するしかありません。

 郵便貯金の場合、公正証書遺言があれば貯金をスムーズに払い戻すことができるとされています。

 銀行の窓口はまだ取り扱いが不統一なため、トラブルが起こりやすいようです。

 この点については、実は銀行でも問題意識を持っていて、公正証書遺言があれば預金払戻に応ずることが多いようです。

 ただ、どの銀行でも、自筆証書遺言の場合は惧重な対応が必要だとされているようです。

 すなわち、銀行の実務では、自筆遺言だけでは払い戻しに応じない取り扱いが多いようです。

その理由としては、
@自筆遺言は証人が不要で、筆記具と用紙、サンプルがあればだれでも簡単に作成できるだけに、その筆跡や内容をめぐって相続人間に争いか起こりやすく、信用性に問題がある。

A相続争いに巻き込まれて銀行が二重払いの危険を負わされるょうな事態は避けなければならない。

B自筆遺言にもどづいて相続人に預金を払い戻した場合、たとえその相続人が正当な相続人でなくても「債権の準占有者への弁済」として銀行の責任は免除されるが(民法478条)、それには払い戻しに当たって「善意かつ無過失」であったという要件が必要で、その立証が難しい、などにあるようです。

 そのために相続人全員の同意書か遺産分割協議書の提出を求めるわけです。

 家庭裁判所の検認があるのにと疑問に思うかもしれません。

 検認というのは、遺言書のあるがままの状態を確認・保存し、その後に偽造・変造があっても照合すればすぐ判別できるようにするための証拠保全手続きであって、遺言書の有効性を認めるという行為ではありません。

 例えば日付がないなど、必要な要件(民法968条)を欠いていて無効な遺言書でも、検認は受けられます。

 しかし検認を受けたからといって、その無効な遺言が有効になるわけではないのです。

 銀行も相続人の立場をよく承知しており、同情していることには間違いないとは思います。

 ただ銀行には預金の適正管理という公的ともいえる任務があり、こうした書面の提出を求めざるを得ないのです。

 これまでの話をまとめると、自筆証書遺言では預貯金の払い戻しは受けられず、遺言がない場合と同様に遺産分割協議書や全員の同意書、それに被相続人(亡くなった人)か生まれてから死亡するまでの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書など多数の書類を要求されるというのが実際です。

 ここではその当否はともかく、現実はそうなんだということだけを指摘しておきます。

 公正証書遺言では、通常、遺言執行者を定めます。

 遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための権限を行使できる者ということで、その権限の中には預金の払い戻し請求権限も含まれています。

 遺言執行者がその公正証書遺言、被相続人が死亡したことを示す除籍謄本、相続人がその公正証書に書いてある相続人本人であることの証明書(印鑑証明書と戸籍謄本)などを持参して払い戻しを請求した場合、銀行は払い戻しを拒絶できません。

 もし、その公正証書遺言を作成した後に他の公正証書遺言か自筆遺言証書か出てきて、そのほうが有効だと認められたとしても、提示された公正証書遺言を有効なものと信じて払い戻しをした銀行には責任がないのです。

 これも前記した「債権の準占有者への弁済」(民法478条)です。

 銀行には提示された公正証書遺言の有効性を判定したり、他に有効な遺言が無いかどうかを調査したりする義務はありません。

 そのような判定・調査をしなくても義務違反にはならないのに、それを拒んだ銀行が、預金の払い戻しだけではなく、年率5歩の延滞利息と弁護士費用の支払いまで命じられたという「さいたま地方裁判所の判決」もあるそうです。

 被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありませんので子供さんのいらっしゃらない高齢の方には、特に公正証書遺言を作成されることをお勧めいたします。

 家庭裁判所での遺産分割調停の三分の二は、「公正証書遺言」があれば、回避できるものであると公証人が研修会でおっしゃっていました。


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