神戸国際協力交流センター雇い止め裁判

裁判の概要 (神戸地裁での争点です。高裁では少し違った角度から今争っています。)

訴訟にいたる経緯

 神戸国際会館の20階にある財団法人・神戸国際協力交流センター(理事長は笹山幸俊前市長)は神戸市からの補助金で運営される市の外郭団体です。開発途上国の人材を招いての研修の実施、留学生支援、在神外国人の生活相談等を主な業務としています。
 私はこの財団に平成12年度より嘱託職員として雇用され、主に研修事業を担当してきました。個人で加盟できる神戸ワーカーズユニオンに加入し、分会委員長となったきっかけは、職員が1年契約(更新の限度は6年)の嘱託職員という不安定な身分であり、去年3月に突然、4年目の契約更新の際には公募試験を受けることを求められ、合格しなければ契約の更新をしないと一方的に通告されたからです。 しかし財団は試験の受験を拒否した分会書記長を6月に雇い止めし、さらに今年3月には神戸市からの予算削減を理由に、私ともう1人の職員を今度は公募試験もせずに3年で雇い止め・解雇しました。そしてその2ヶ月後には新たな嘱託職員を公募しています。
 私に対する雇い止めの理由は全く合理的なものではなく、解雇撤回を求めて5月21日神戸地裁に提訴しました。


雇い止め理由はいずれも不当

財団は私の雇い止めに関し、以下のような説明をしていますが、どれも合理的な理由ではありません。

1.「1年契約の期間満了による」

 財団における嘱託職員雇用の実状は、特別の事情がなければ自動的に契約が更新されるものであり、実質的には契約締結後6年で雇い止めすることを内容とする期間の定めのない労働契約と異ならず、更新拒絶には合理的な理由が必要です。
 事実、公募試験導入(昨年6月)以前には嘱託職員の契約更新が財団から拒否されたことは一度もありませんし、契約更新の手続きも、契約終了後数週間たってから新しい契約書に押印するよう求められる形式だけのものでした。

2.「3年以上は雇わないことになったから」
 嘱託職員要綱で契約更新の限度が6年であるにもかかわらず、財団は、私への雇い止め通告時(1月21日)には「嘱託職員は今後3年以上は雇わない」と言い切りました。しかし、あまりに根拠がない理由だと思ったのか、その後の団体交渉で撤回しました。

3.「神戸市からの予算削減のため、嘱託職員を2人減らす必要がある。雇い止めの対象となる2人の選考基準は勤務期間の長さで、これはマンネリ化防止・組織の新陳代謝が必要だと判断したからだ」

  神戸市からの予算削減のため縮小される事業は、神戸アジアプラザと神戸国際プラザの運営に関わる事業であり、減員の対象となった2人の担当である研修業務とは全く関係がありません。

     勤務期間の長い者から対象としたということであれば、昨年公募試験に合格し、通算4年目の職員が存在します。その職員が対象にならないのはなぜかという問いに、財団は「試験を受けた時点で1年目だ」と回答しましたが、賃金は4年目にランク付けされており、退職金も支払われていません。また、公募試験導入時の団交では「試験を通った者は4年目の扱いだ」と明言しています。

    嘱託職員の平均勤続年数は2年1ヶ月(3月1日現在)。毎年4人以上が自主退職しています。これほど新陳代謝を必要としない職場は他にあまりないでしょう。さらに「具体的にどんなマンネリ化の実態があったのか」と聞いても答えられません。

     予算がなく嘱託職員を2人減員しなければならないという一方、3月には欠員補充のため臨時職員を2人新たに採用しています。

     人員削減にあたって財団は希望退職を募るどころか近々退職するものがいるかどうかの確認すらしていませんでした。

そして雇い止めを強行した2ヶ月後には自主的な退職者が現れ、その欠員補充のための新たな職員を募集しています

このように今回の雇い止めには何ら正当な理由がなく、財団が組合を嫌悪した結果の不当解雇としか考えられません。


公務職場の非正規雇用を問う裁判に


 今日本では、正規の労働者が減少する一方、不安定雇用の非正規労働者が1,500万人にも激増しています。その中には労働時間や責任は正規と変わらず、雇用区分を理由に労働条件だけが低く抑えられている労働者が多く含まれ、正規労働者から非正規・有期雇用労働者への代替が急速にすすんでいるのが実態です。
 また、現在全国の地方自治体では約30万人の非常勤・臨時職員が働いていますが、そのほとんどが女性で、自治体の基幹的・恒常的業務に従事しているにもかかわらず、低賃金・低待遇である上毎年契約打ち切りの不安にさらされています。特に公務職場の非正規職員の場合、何ら合理的理由なく契約更新の限度を内規として決めていたり、更新の度に試験を受験させたり、雇用を継続させないよう契約と契約の間に中断日を入れたりといったことがおこなわれています。
 神戸国際協力交流センター雇い止め裁判は、激増する非正規・有期労働者の雇用、特に“公務職場(自治体とその関連団体)”における非正規労働者が直面している問題を問う裁判でもあります。


論点1.契約更新のための公募試験は無効

 財団幹部は自分たちの嗜好に合わない職員をいつでも首にできるよう、4年目の契約更新の際には公募試験(面接と筆記)を受けなければならないと一方的に決定しました。そしてその目的を「嘱託職員のやる気をださせるためだ」とし、試験導入の結果「緊張感を高め、効果があった」と強弁しています。
 しかし、このように評価基準が全く明らかにされず、これまで働いたこともない人達と同じ試験を受けなければいけないという試験導入によりやる気のでる労働者など存在しません。こんな制度が認められれば、だれでもいつでも経営者の恣意的な判断で自由に解雇されてしまいます。

論点2.契約更新の限度は女性差別の「若年定年制」

 財団の嘱託就業要綱では、嘱託職員の雇用契約更新の限度は通算6年までと定められています。しかし嘱託職員は財団の基幹的・恒常的な仕事を担っており、更新の限度を定めることには何の合理性もありません。嘱託職員の募集は35歳が上限であり、6年の更新限度は最高41歳を上限とする実質的な若年定年制です。

また、財団では雇用機会均等法の改正で女性のみの募集が禁止されるまでは嘱託職員の募集対象を女性に限定しており、改正以後も1人以外全員が女性であることからして、これは雇用形態の違いを隠れみのにした間接的な女性差別です

同じ仕事を担当していた神戸市からの派遣職員と比較すれば、嘱託の賃金や待遇は低く抑えられ、住宅手当や扶養手当は適用されません。「嘱託職員は若くておとなしくて、そこそこ仕事をしてくれる女の子がいい。(3,4年で転勤になる)自分たち神戸市からの派遣職員より仕事ができる人がいると困る」というのが財団管理職の本音です。

※高齢法第4条では60歳を下回る定年を定めることを禁止しています。

※雇用機会均等法8条では女性であることを理由とした定年の差別的取扱を禁止しています。

1975年の朝日放送事件判決では、常勤アルバイトの雇用を内規で2年を限度とし、雇い止めしたことに対してこれは実質上若年定年を理由とする解雇と同様であり、無効だとしています。

論点3.嘱託制度は「合理的理由のない」有期雇用制度

財団嘱託職員制度の実態

 財団の職員構成は神戸市からの派遣職員が9人、神戸市職員再雇用嘱託が1人、若年嘱託が11人、臨時職員が4人、招聘外国人青年が1人です。市職員は管理職か庶務・経理の担当者で、事業実施の中心的役割を担っているのは私たち嘱託職員です。勤務時間も神戸市職員と全く同じであり、月の残業が80時間に及ぶこともあり、海外出張もあります。つまり、財団において嘱託職員は、恒常的・基幹的でかつ専門性や経験が必要な業務に従事しています。

 しかしその雇用は不安定な1年契約であり、最長でも6年しか働くことができません。このような雇用制度は嘱託職員にとってなんの利益もありません。

有期雇用の本当の理由は・・・

 実は財団の就業規則(労働基準監督署には届け出なし)には期間の定めのない雇用を前提としたいわゆる正規職員を雇用するための規定がありますが、設立以来存在したことがありません。

 財団は、正規の職員ではなく有期雇用の嘱託を雇用している理由について「1年契約の理由は財団の運営財源のほとんどが神戸市の補助金であり、当該補助金は神戸市の単年度の予算措置に基づくためです」と説明していますが、一般の企業においても今の人事予算が将来も確保できる保障などありませんし、同じように市の補助金で運営している外郭団体でも独自の正規職員を雇用している事例があります。

 人件費はできるだけ安くおさえ、職員はいつでも首を切れるようにしたい。組合に入って労働者としての権利を主張するなんてとんでもない。というのが財団における有期雇用の本当の理由です。これは財団には人材を育て、真剣に国際協力・交流に取り組もうという姿勢が全くないということのあらわれでもあります。

 このような嘱託職員の制度自体、法の下の平等原則(憲法14条)、均等処遇(労働基準法3条)ないし男女同一賃金(同朋4条)の規定にあらわれている同一価値労働同一賃金の原則などからみても公序に反するものです。

 そして、「合理的理由のない」有期雇用が広がれば、これまで組合運動や裁判を通じて勝ちとってきた労働者の権利は骨抜きにされ、「解雇自由の社会」になってしまいます。

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