冠血流について(2)

以上前回は、主に安静時における冠血流速パターンを説明しました。今回は、負荷に対する冠血流の変動、すなわちFlow reserveなどについて、お話しします。

1)AutoregulationとFlow reserve

冠動脈の血流はdriving pressureが変動してもある血圧の範囲では一定に保たれるautogerulationといわれる機構が存在しています。この機構に関して冠血流量を縦軸に、冠環流圧を横軸に取ると図1のようになります。左の直線が最大限に血管が拡張した状態での冠環流圧-流量関係になります。この直線がX軸とクロスするポイントがいわゆるZERO-FLOW PRESSUREといいます。また、右の直線は最大限に血管が収縮した状態での冠環流圧-流量関係を示し、その間の赤い線がある程度の冠環流圧ならば圧に左右されることなく冠血流量が一定に保たれていることを示します。これをAutoregulationといいます。そこで、ある血圧で冠血管を最大限に拡張すると血流はAからBまで増加します(青い線)。この増加した冠血流量を冠予備能といいます。

冠予備能は通常は冠狭窄度によって規定されているかのようにいわれていますが(75%狭窄以上で冠予備能が2以下になるなどというデータ)、図2-4でよく分かるように、冠血管床が減少すれば最大冠拡張能力が低下して、傾きが落ち、Flow reserveは低下します(図2.)。これは、糖尿病や心筋梗塞を生じた領域で冠予備能が低下する説明になります。また、図3.の様に、心肥大などで基礎の血流量が増大(黄色から赤へ)している場合もFlow reseveは低下します。冠狭窄によるFlow reserveの低下は図4.の様に冠狭窄によってDriving pressureが変化したことで説明可能です。

従って、冠予備能とは単一のものを見ているわけではなく。いくつかの要因によって左右される指標です。

2)Diastolic pressure flow relation

図2.で示したような、冠血管床の減少は臨床的にはFlow rerveの低下などからうかがい知れますが、具体的にはどうやって知ることができるのでしょうか? Bellamy(1978)らは実験から、瞬時瞬時の拡張期の冠血流量とdriving pressureをプロットして行くと、ほぼ直線状になり、冠血流量がゼロになる冠環流圧(zero-flow-pressure)を求めることが可能で、しかもこのzero-flow-pressureは右房圧より高いことを証明しました。従って、冠環流のdriving pressureというものは単なる大動脈圧だけではなく、zero-flow-pressureも影響するはずです。zero-flow-pressureは恐らく、心筋の硬さや冠血管床自体にも影響を受けるので、正確にはかなり複雑になります。

しかし、臨床ではzero-flow-pressureの関与を無視することでこのDiastolic pressure flow relationの傾きを算出することが可能です。即ちドプラワイヤで記録した冠血流の拡張期の流速と同時記録した大動脈圧で同じように傾きを算出できます。

心筋梗塞のNo reflow現象でなぜ、拡張期の冠血流速のdecerelationの急峻化が見られるのかという理由については、先に述べたDiastolic pressure flow relationの傾きが急峻化するために僅かなdriving pressureの低下が血流量の変化を生じるからなのです。