出会い−琴音−
また私のせいで、不幸な目に遭う人が増えてしまった・・・。
私なんて・・・この世にいないほうがいいのかも知れない・・・。
そんなことを考えながら、私は廊下を歩いていました。
私を知っている人は、みんな私を避けて通ります。誰だって不幸に見舞われたくはないでしょう。
前から同じクラスの人がやってきました。私を見るなり横目でちらっと睨むと、そのまま速足で通り
過ぎました。
いつものことだから、それほど辛くは思いません。でも、やっぱり独りは寂しいものです。
昼休み。昼食をとろうと食堂へ向かう途中、なにやら人だかりができているのが目にとまりました。
どうやら部員の勧誘のようです。でも、その勧誘には聞きなれない言葉がいくつかありました。
もしかしたら、新しく部を設立するつもりなのかも知れません。
・・・いつもなら、そんなことは気にも止めない私ですが、なぜか私の足は、いつのまにか、その人だかり
の方へ向いていました。どうして・・・?格闘技なんかには興味ないのに・・・。
「ですからエクストリームは総合的な異種格闘技で・・・」
人だかりの中心に、女の子がいました。熱心に格闘技について説明しています。
ショートカットの小柄な娘で、離れて見ても、私より背が低い娘でした。
前に一度空手部の主将を見たとき、1年上の先輩でしかも女性なのに、とても体が大きくて何となく怖いイメージを抱いたのを覚えています。 でも目の前の少女は、そのときの先輩とは違って、とても格闘技をやるような娘には見えませんでした。でもあんなに一生懸命に・・・。
しばらくその様子を見ていましたが、1人、また1人と周りの人たちが離れていくのを見て、私も
自然とその場を離れました。
食堂は、すでに沢山の生徒でひしめいていました。でも、幸い券売機のほうは空いていて、私はいつも
のようにキツネうどんの券を買うと、できるだけ人のいない席を見つけて座りました。
しばらくしてうどんを受け取り、何気なく周囲を見渡してみると、さきほど格闘技同好会の勧誘を
していた小柄な少女を見つけました。彼女の周りにも女の子がいましたが、一度も話さないところを見ると、
どうやらあの娘は独りで食べているようです。
・・・そういえば・・・あの娘・・・前に見たことがあるような・・・。
思い出しました。たしかあの娘は、いつも独りでBランチを食べていた女の子です。毎日昼休みを半分
過ぎたぐらいから、食堂にやってきて、Bランチを食べている娘でした。
それなのに、食べ終わるのはだいたい私と同じくらい。女の子なのによく食べる娘でしたから、何となく
印象に残っていました。
放課後。いつもならこんなことはありえないのですが、私は何となくあの娘のことが気になって、
彼女のクラスに行く事にしました。
A組・・・B組・・・ありました、C組です。以前、あの娘がこのクラスから出てくるのを見たので、
多分彼女の教室はここでしょう。
でも、教室の中には入りませんでした。いえ、入れませんでした。何となく避けられることは分かって
いたので、私は教室の外で待ちました。
「あの・・・」
私はC組の教室から出てきた女子に声をかけてみました。
「何?」
「このクラスに、格闘技をやってる娘・・・いますか・・・?」
「あぁ、松原さんね」
その人は快く私の質問に答えてくれました。どうやら、まだ私の噂は聞いていないようです。
だって、もし知っていたら・・・。こんなふうに話をしてくれませんから・・・。
「その松原さんって、どんな人・・・?」
私は思い切って聞いてみました。あんなに元気のいい娘だもの・・・クラスでも人気があるんだろうなぁ。
そう思っていましたが、彼女の口から意外な言葉が返ってきした。
「面白くない娘よ。カラオケに誘っても、いっつも断るし・・・。最近の歌は全然知らないみたい。
おまけにエクスト・・・なんとかって言う格闘技のことばっかり考えてるみたいでね。私たちと話が
合わないんだ。だからクラスでも孤立ってわけじゃないけど、いっつも独りなんだ」
“独り”・・・。その言葉がひどく私の頭を刺激しました。
「まぁ、とにかくあんまり関わらないほうがいいわよ。あなたも勧誘されるかもね」
そう言って、彼女はカバンを片手に去っていきました。
・・・独り・・・私と・・・同じなんだ・・・。
次の日、昼休みに私は“あの場所”へ向かいました。
そこでは昨日と同じように、あの女の子が熱心に格闘技について説明していました。
「ですから、エクストリームというのは・・・」
さっきまで集まっていた観衆は時間が経つにつれ,まばらになっていき、ついには誰もいなくなりました。
去っていく人たちを寂しそうに見ながら、女の子はためいきをついていました。
その様子をみて、私は思い切って声をかけてみることにしました。
「あの・・・」
私が声をかけると、その娘は一瞬、ビクッとなって振り返りました。
「はい?」
そして私の顔を見ると、さらに驚いたふうに目を見開いています。
「すこし・・・お話してもよろしいですか?」
この時、私は何となく彼女とは落ち着いて話せそうな気がしました。そして同時に思いました。
この人なら・・・友達になれるかもしれない・・・と。
後書き
最後が漢文調ですね。これは、項羽と劉邦に影響されたかも知れません。鉄人28号と同じ作者が書か
れた漫画をずっと読んでいるものでして・・・。
あまり関係ない話ですが、こういう話になると、やたらと「ら抜き言葉」が目立つようになります。
気にならない人には気にならないかと思いますが、打っている途中に、そこかしこに赤い波線が引かれ、
校正するように勧められます。できるだけ訂正してはいますが、人物のセリフだけは、性格付けがあり
ますから、これは譲れません。
それから・・・後書きが見つかりません。次の後書きではいろいろ書きますが、とりあえずここは
ひとまず締めくくることにします。
それでは、「友達−葵−」をお楽しみください。
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