出会い−葵−

 

 どうして誰も聞いてくれないんだろ・・・。
始めのほうはちゃんと聞いてくれるのになぁ・・・。
同好会の勧誘をはじめて、今日で5日目になりますが、誰一人として最後まで聞いてくれません。
みんな格闘技に興味はないのかなぁ・・?
・・・はぁ、お腹すいた・・・。食堂にでも行こう・・・。

 食堂にはあいかわらず、大勢の人がひしめいています。カレーを食べている人、キツネうどんを食べている人。あ、私が好きなBランチを食べてる人もいる。よし、私もBランチにしよう。
何とか空いている席を確保して、すこし遅めの昼食。エクストリームを目指す私にとっては、これぐらいの量を食べないと足りません。大きめのカツを食べながら、何気なく食堂を見渡すと、見覚えのある少女が目にとまりました。
たしか、あの娘は・・・。名前は知りませんが、いつも寂しそうにキツネうどんを食べているのを何度となく見ていました。
「あの娘、いつも独りで・・・」
そう呟いて、思いました。・・・私も・・・独りなんだ・・・。

 「ですから、エクストリームというのは・・・」
言いかけて、やめました。周りにはもう誰も居ません。
・・・今日も・・・最後まで聞いてもらえなかった・・・。何度、同好会設立を諦めたか分かりません。
何度もくじけそうになりました。でも、私は綾香さんに追いつきたい!その一心で今日まで頑張って来ました。
それなのに・・・私は、何をしてるんだろ・・・。
もう誰も、聞いてくれないのかなぁ・・・。
やっぱり好恵さんの言うとおり、空手に戻ったほうが良かったのかも・・・。
私は、決心しました。こんなことをしていたらダメだ。こうしている間にも、好恵さんや綾香さんは
ずっとずっと強くなっている・・・! もうエクストリームは・・・、同好会はあきらめよう・・・。
そう思った時でした。
「あの・・・」
えっ?
私は驚きました。突然声をかけられたからビックリしたのではありません。今まで、こういう状況で
声をかけられたことが一度も無かったからです。
「はい?」
間の抜けた返事で、声の主を振り返ると、私はまたも驚かされました。
あの娘です。いつも独りで淋しそうに食堂にいるあの女の子でした。
とても、格闘技に興味があるような娘には見えません。
「すこし・・・お話してもよろしいですか?」
その女の子は小さな声でそう言いました。
それが、私と姫川さんとの出会いでした・・・。





   後書き

 第一話は短く、徐々に量を増やしていく。これが僕のやりかたです。
後になるほど、文章量は多くなっていきます。
さて、一話目は2人の出会いですが、これは本当の出会いではありません。
劇中では、全くと言っていいほど接点のない2人。せめてSSで2人のエピソードを書こうと思ったのは、
まぁ、一言で言えば僕の趣味です。どういう趣味かは・・・また後ほど・・・。
それでは、「出会い−琴音−」をお楽しみ下さい。

 

   戻る