
千葉県4
国造丁日下部使主三中(くにのみやつこのちやうくさかべのおみみなか)の父の歌。
「家にして 恋ひつつあらずは 汝が佩ける 大刀になりても 斎ひてしかも」
(4347番・あずま歌)
訳
家に残って 逢いたい逢いたいと思って
どうしているかと 案じるよりも
おまえが 腰に帯びる太刀
その太刀になってでも おまえを見守りたい
腰に帯びる太刀になって おお息子よ
☆ ☆
国造丁日下部使主三中(くにのみやつこのちやうくさかべのおみみなか)の歌。
「たらちねの 母を別れて まこと我れ 旅の仮廬(ほ)に 安く寝むかも」
(4348番・あづま歌)
訳
いつくしみ深き わが母
この母を置いて
この母と別れて
ほんとうに このオレは
旅の仮寝を 心安らかに
心安らかに 眠れるであろうか
蛇足・生産性の低かった当時では、一家の柱を徴発されると、飢えがまっていました。
☆ ☆
助丁刑部直三野(じようちやうおさかべのあたひみの)の歌
「もも隈の 道は来にしを またさらに やそ島過ぎて 別れかゆかむ」
(4349番・あづま歌)
訳
何度もなんども 道を曲がって
長の道のりを ここ難波津まで 遙々ときたものを
この上さらに 舟に揺られて
故郷から 遠のいて行かねばならぬのか
舟に揺られて 故郷からさらに
☆ ☆
主帳丁若麻続部諸人(しゆちやうのちやうわかをみべのもろひと)の歌
「庭中の あすは(阿須波)の神に 小柴さし 我はいははむ 帰り来までに」
(4350番・あづま歌)
訳
庭中に奉る あすは(阿須波)の神に
小柴を捧げ われは祈り続けん
わが子が 無事に帰り来るまでは
祈り続けん ただひたすらに
☆ ☆
望陀の郡の上丁玉作部国忍(まぐたノこほりノじやうちやうたまつくりべノくにおし)の歌
「旅衣 八重着重ねて い(寐)のれども なほ肌寒し 妹にしあらねば」
(4351番・あづま歌)
訳
旅衣を 幾重に重ね着て寝ても
なほ肌寒し
妻の柔肌ではないのだから
旅の宿りの淋しさよ
注・「望陀の郡」は、今の木更津市の一部。
☆ ☆
天羽の郡の上丁丈部鳥(はせべノとり)の歌
「道の辺の うまら(茨)の末に はほ豆の からまる君を はかれか行かむ」
(4352番・あづま歌)
訳
道端の茨の枝先に 豆蔓のからみつくように
別れを惜しんで 纏わり付かれる 若様よ
この若様から 引き剥がされてまで
防人に 旅立っていかねばならないのか
引き剥がされて 旅立つ オレは ああ
注・天羽の郡は、今の君津市の一部
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朝夷(あさひな)の郡の上丁丸子連大歳の歌
「家風は 日に日に吹けど 我妹が 家言持ちて 来る人もなし」
(4353番・あづま歌)
訳
クニの方からの東風は 日々吹けど
わが妻の便りを 伝えてくれる 人はなし
わが妻は 如何したるらん
注・朝夷の郡は、今の千倉町。
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長狭の郡の上丁丈部与呂麻呂の歌
「立ち鴨の 立ちの騒きに 相見てし 妹が心は 忘れせぬかも」
(4354番・あづま歌)
訳
飛び立つ鴨の 群れのような出立の騒ぎ
あの騒ぎの中に そっと送りにきて
目を見交わした あの子
目を見交わした あの子を どうして忘れらりょか
注・長狭の郡は、今の鴨川市
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武射の郡の上丁丈部山代の歌
「よそのみに 見てや渡らも 難波潟 雲居に見ゆる 島ならなくに」
(4355番・あづま歌)
訳
ここ難波潟を
眺めるのみで 渡りゆくのか
はるか雲の間から 見るのみか
故郷に連なる山並みも 雲の合間に見るのみで
はるかに筑紫へ 船出していく ああ われらは
注・武射(むざ)は、今の千葉県山武町。
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山辺の郡の上丁物部乎刀良(もののべノおとら)の歌
「我が母の 袖もち撫でて わがからに 泣きし心を 忘らえぬかも」
(4356番・あづま歌)
訳
おっかあが 袖でオレの頭を掻き撫でて
泣く泣く 別れを不憫がったよ
あのおっかあの 心を
どうして忘らりょか
どうして どうして忘らりょか
注・山辺の郡は、今の千葉県東金市
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市原の郡の上丁刑部直千国(おさかべノあたひちくに)の歌
「葦垣の 隈とに立ちて わぎもこ(我妹子)が 袖もしほほに 泣きしぞ思はゆ」
(4357番・あづま歌)
訳
葦を結った垣の 隅っこに立って
ひっそりと 送ってくれた
わが妻が
袖も絞るばかりに 泣き濡れていた
あの姿が 心を去らぬ
泣き濡れていた 我が妻よ
注・市原の郡は、今の市原市。
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周淮の郡の上丁物部龍(もののべノたつ)の歌
「大君の命畏み いで来れば 我のとりつきて 言ひし子なはも」
(4358番・あづま歌)
訳
オオキミの御命令をかしこみ
門出をしてきたものの
我にとりつきて せつない心を訴えた
あの子はどうしているだろう
あの子は 嗚呼
注・周淮の郡は、今の千葉県君津市。
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長柄の郡の上丁若麻続部羊(わかおみべノひつじ)の歌
「筑紫辺に 舳向かる船の いつしかも つかへまつりて 国に舳向かも」
(4359番・さきもり歌)
訳
筑紫の方に 舳を向けている船に
今は乗っているが
何時 防人の務めを終えて
故郷へ 舳先を向けて 帰れるものか
何時 故郷へ帰れるものか
注・長柄の郡は、今も千葉県長柄郡。
